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札幌高等裁判所 昭和29年(ラ)29号 決定 1954年10月15日

抗告申立人 山下初江

訴訟代理人 佳山良三

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は、原決定を取消す、札幌地方裁判所小樽支部昭和二十九年(ケ)第六号不動産競売事件につき、同裁判所が昭和二十九年二月八日なした競売手続開始決定を取消す、本件競売申立を却下するとの裁判を求め、その理由として主張するところは別紙抗告理由に記載するとおりである。

よつて調査するに、本件貸金債権の元本金三十五万円並びに抵当権の存在については抗告人において異存のないこと記録に徴し明かであるから、利息及び損害金の定めが利息制限法に違反するか否かの点につき判断するまでもなく、本件競売手続開始決定は正当である。また月一割の利息及び損害金の定めがあつたとしても公序良俗違反として消費貸借契約そのものの無効を来すものとも認められない。原決定もこれと同趣旨にいで、抗告人の異議申立を理由なしとして排斥したもので何等違法の点はない。その他記録を精査しても原決定は正当であるから、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 原和雄 裁判官 臼居直道 裁判官 松永信和)

抗告理由

一、原審決定は異議の申立が何故に其理由がないと謂うにあるか実体的判示を為さず、恰かも申立其ものが不適法の故を以て却下したと同様彼此を混同した違法がある。

二、抗告人の主張するところは異議申立の事由に於て明かにしてある通り、債権者の利息金の請求割合が一ケ月一割即ち年十二割に相当する為利息制限法第二条に違反するから此の点に於て同競売申立は違法である。

三、前項年十二割の金員請求が仮りに損害金の請求にせよ、斯る高率の請求は我国の経済現情に即し国民経済生活に於ける公序良俗に反するものであるから、原審裁判所が之を漫然認めた上の本件競売手続開始決定は此の点に於ても違法である。

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